ゆずはら置き場/パノラマ観光公社

作家・ゆずはらとしゆきのお仕事報告ブログです。

最近のお仕事(2017年夏)

 久しぶりに、いくつか仕事の報告です。

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久々に「パノラマ観光公社」のほうで『万引き女子〈未来〉の生活と意見』という本の編集をいたしました。

小説ではなく、ノンフィクションというか、万引き常習犯でクレプトマニア(窃盗症)だった著者さんの体験告白です。
犯罪者の体験告白ものかと思いきや、途中から「バラードか?」と思うような強迫観念との戦いになったり、それでいて妙なユーモアがあったり、まさに「事実は小説よりも奇なり」という実話です。

本来、こういうタイプの外注編集仕事で名前は出ないんですけど、「事実は小説よりも奇なり、なので、むしろ小説っぽい装丁にしましょう」とのことで、本の仕様からトータルで手がけることになりましたので、二年ぶりに「パノラマ観光公社」が復活しました。*1
ブックデザインもヨーヨーラランデーズさんにお願いいたしました。

カバー&本文のイラストレーションは、「地方都市の少女の仄暗い生活風景が描ける漫画家さん」ということで、『R-中学生』水色の部屋ゴトウユキコさんにお願いいたしました。

yanmaga.jp

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ゴトウさんの作品や世界観が好きな方には、間違いなく面白いと思います。*2

題材やエピソードは実話ナックルズな方面ですので、たぶん宣伝もそっち方面がメインだと思うんですが、わりと往年の講談社BOXっぽく作ってしまったので、泡盛古酒でリキュール作ってしまいました」的な感じのマイルドさになっております。
口当たりは良いけど、アルコール度数はけっこう強いよ、みたいな。

そして、編集しつつ「こういう物語はフィクションな小説ではなかなか書けないよなァ」と、驚いたり考え込んだり。「お前は小説書かないで何やってんだ」と言われそうではありますが、面白くも勉強になる仕事でした。

万引き女子〈未来〉の生活と意見

万引き女子〈未来〉の生活と意見

 

 

で、もうひとつご報告。 

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 S-Fマガジン2017年10月号、「オールタイム・ベストSF映画総解説 PART1」で、フランキー堺主演世界大戦争の解説を書かせていただきました。
昭和三十年代に東宝が全面核戦争を描いた大作映画で、怪獣や宇宙人は出てこないですが、トラウマは全開です。
ついでに世間とのタイミングもドンピシャだ。まったく嬉しくないけど。

世界大戦争  [東宝DVD名作セレクション]
 

オールタイムでSF・ファンタジイ映画500本を解説する大特集なんですが、PART3まで三号連続とのことでびっくり。
本号では、1902年の月世界旅行から1988年のゼイリブまで、計250作を掲載とのことです。

SFマガジン 2017年 10 月号

SFマガジン 2017年 10 月号

 

 

いくつかと言いつつ、よくよく考えたら記名だったのは二件だったりしますが、秋くらいに、また報告できるのではないでしょうか。 そうであって欲しいな。

*1:実際、出ない仕事はときどきやっております。此処にも書いていないですが。

*2:間に入っていただいた編集さんが、講談社BOXでお世話になった編集さんの弟さんだったのでちょっとびっくりでした。

ComicREX創刊140号記念キャンペーン

講談社のKindle1万点セールに続いて、一迅社ComicREX創刊140号記念、ということで、『空想東京百景〈異聞〉Strange Report』『平安残酷物語』漫画版全2巻を含めた電子書籍が、半額やポイント50%還元になっているようです。 

 

平安残酷物語: 1 (REXコミックス)

平安残酷物語: 1 (REXコミックス)

 

 

平安残酷物語: 2 (REXコミックス)

平安残酷物語: 2 (REXコミックス)

 

ComicREXでは、来月号(9月号)から真西さんのオリジナル新連載も始まるとのことですので、未読な方はこの機会に『平安残酷物語』コミカライズ版もよろしくですー。

 

 

ぼくの方は、前にも書いたように、小説が開店休業中ですので、代わりに「小説の仕事ではないけど、作家の仕事ではある」仕事をやっております。
本文だけ投げて、タイトルなどは先方さんが決めるのですが、特にクレジットが出るわけでもない仕事なので、そのあたりは気にしません。*1

そういえば、昔、何かの機会に作家さんたちが集まったときに「(小説では)作品タイトルもイラストレーターさんも自分で決めている」と言ったら、ある売れっ子作家さんにえらく驚かれたことがありました。
「なんとなく絵柄の要望を出したことはあるけど、イラストレーターを自分で決めたことがない」
と言われたので、こちらも驚いたのですが。

まァ、ぼくは自分で台割を作ったりもしていますので、かなり特殊な例ではあると思います。
それでも、デザイナーさんの決定権は半々ですし、イラストレーターさんは担当さんの推薦から決めることもあります。*2

そもそも、『空想東京百景』シリーズtoi8さんで何か作れ」という編集さんの無茶振り依頼で、ポートレートを見ながら第一期のプロットを作っていたので、作品作りにはいろんなパターンがあるのです。
個人的には、絵柄から逆算して考えていくので、イラストレーターさんが先にありきで決まっていたほうが、作品のイメージは作りやすいですね。*3

ちなみに、一番すごかったのは、駆け出しの頃のゲームシナリオ仕事でして、シナリオを納品して発売された商品のパッケージを見たら、登場人物の名前が全員変更されておりました。
さすがに、これはびっくりしましたが、ゲームシナリオはぼくの著作ではないので、まァ、そんなものかな、と。

あと、代わりの「小説の仕事ではないけど、作家の仕事ではある」仕事でも「技巧的な文章は読者が理解できない」と言われまして、ライトノベルで言われていたことと同じだったので、ああ、何処でも同じなんだなァ、と思いました。
対象読者層は高学歴なひとが多いらしいんですが、だからと言って技巧的な文章が評価されるのかというと、そういうことでもなく、むしろ小説や漫画を読む習慣がない読者層なので、シニカルな比喩とかはまったく理解できない、のだそうです。

そう考えると、00年代前半のライトノベルは、えらくハイレベルなことが許されていたんだなァ、と懐かしくなってきました。
単にジャンルのアイデンティティが確立される前の過渡期で、他のジャンルの権威へ乗っかる必要があったので、デタラメも渋々ながら許容されていた、とも言いますが。

でも、編集さんが「技巧的な文章は読者が理解できない」とか言い出すようになると、そのジャンルには惰性が忍び寄るのですよ。
惰性でやっているほうが実は儲かる、というのも事実ですけど。

*1:そういう仕事は昔からよくやっております。ゲームシナリオとかも、大半は無署名でやっていましたので。

*2:デザイナーさんを自分で選べる場合は、ヨーヨーラランデーズさんやデコネコの小石川ふにさんに頼んでおります。

*3:『空想東京百景』第一期や『ペンデルトーンズ』のあと、小池一夫劇画村塾(小池塾)で漫画原作者の勉強もしておりました。もっとも、ネーム原作の時代になったので、脚本原作の技術はライトノベルで活かされることになりましたが。

2017年初夏の近況と50%ポイント還元セール

毎年恒例(?)、講談社のKindle1万点セールが始まりましたので、ついでにぼくの近況も取りまとめておきます。


まず、講談社のKindle1万点セールですが『空想東京百景』シリーズ既刊3冊と、ぼくが企画編集した日日日×千葉サドルシリーズ4冊50%ポイント還元になっておりますー。6/8まで。

Amazon.co.jp: ゆずはらとしゆき - 講談社の書籍・雑誌 1万点 最大50%ポイント還元セール(6/8まで): Kindleストア

Amazon.co.jp: 日日日 - 日日日 / 講談社の書籍・雑誌 1万点 最大50%ポイント還元セール(6/8まで): Kindleストア

元が高い単行本なので、ポイント還元されると、かなりお安くなるのではないかと。
あと、紙の単行本は元々、あんまり出回ってないですので。


その『空想東京百景』シリーズですが、現在、講談社BOXから2008年刊の『空想東京百景』と、2015年刊の『空想東京百景〈V2〉殺し屋たちの休暇』『空想東京百景〈V3〉殺し屋たちの墓標』の本編3冊と、一迅社REXコミックスからtoi8さんの漫画版『空想東京百景〈異聞〉Strange Report』が出ております。*1*2

講談社BOX:空想東京百景|講談社BOX|講談社BOOK倶楽部

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なお、シリーズ本編の続刊の行方は不明ですが、七年に一度の2022年までには。
どっかで。
なんとか。

あと、現在、小説レーベルには担当さんがいない(いてもほとんど連絡取っていない)ので、もし仕事のご相談とか連絡事項とかありましたら、Gmailのメルアドからよろしくです。

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ゆずはらとしゆきさんのプロフィール - はてな

*1:〈異聞〉はtoi8さんのオリジナルストーリーです。ぼくは脚色と企画編集を担当しておりますよ。

*2:二見書房から出ていた〈V2〉プロトタイプの『試作品少女』はたぶん絶版です。