ゆずはら置き場/パノラマ観光公社

作家・ゆずはらとしゆきのお仕事報告ブログです。

『空想東京百景〈V2〉殺し屋たちの休暇』発売2周年です

yuz4.hateblo.jp

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……というわけで『空想東京百景〈V2〉殺し屋たちの休暇』発売2周年ですよ。

まさかこの怒涛の連続刊行から2年、ぼんやり開店休業状態になるとは思わなかったですが。

いや、昨年まで仕事はしていたのですが、現状、その作品もお蔵入り状態になっていまして、今年は何もしていないのです。

『空想東京百景』シリーズは、2001年の連載開始から、2008年に単行本1巻、2015年に2巻3巻漫画版と、7年おきのペースなので、次は2022年かな、と冗談で言っていたんですが、この調子だと本当にそんな感じになりそうです。

それ以前に、『空想東京百景』以外の仕事もしないといかんのですが、小説以外の企画編集やライター仕事も歓迎ですよ。*1

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過去の仕事はだいたいこんな感じ*2ですね。

ブランクが空きすぎて営業活動の伝手が思いつかないので、ぼくからは動いていないのですが、気軽にご相談いただけば。基本的には暇ですので。

……ということで、いつもの近況報告と宣伝(?)でした*3が、あとは思い出した余談をいくつか。

読むと分かると思いますが、蓬莱樹一郎が主人公『空想東京百景〈V2〉殺し屋たちの休暇』『空想東京百景〈V3〉殺し屋たちの墓標』は、90年代から00年代初頭くらいまで、暇さえあれば名画座やフィルムセンターに入り浸って古いプログラムピクチャーな映画ばかり観ていたら、こういうものを書いてしまいました、という感じの話でして。

鈴木清順監督の『殺しの烙印』、野村孝監督の『拳銃は俺のパスポート』大和屋竺監督の『荒野のダッチワイフ』などに加えて、他にも思い浮かんだものを手当たり次第に鍋へ放り込んで煮込んだら、タクアンやセミの抜け殻もプカプカ浮かんでいる濃厚なジャイアンシチューになってしまったというか。

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たとえば、これ*4とか。

殺し屋ランキングにしても、元を辿ればギャビン・ライアル『深夜プラス1』ですが、いろいろ混ぜた結果、なんかもう書いた本人もよくわからん代物になってますな。


なので、鈴木清順監督の逝去とか大和屋竺監督作品のDVD化とか、いろいろと感慨深いものがあります。『毛の生えた拳銃』DVD化って。

youtu.be

なお、〈V2〉〈V3〉の原型になった『空想東京百景 試作品少女』は、えろーす小説として発注されたので、『荒野のダッチワイフ』寄りというか、早い話がアンブローズ・ビアス『アウルクリーク橋の出来事』ジェイコブズ・ラダーなんですけども、ぼくの技量不足で後半がぐちゃぐちゃだったので、イチから書き直したら〈V2〉〈V3〉になった……という経緯です。

なんでライトノベルを書くのに、そんな珍妙なものばかり参照するんだよ、と言われると、まったくもって平謝りするしかないのですが。

読者としては普通のライトノベル読者のはず*5なんですが、書く側に回るとこうなってしまうのがぼくの悪い癖です杉下右京風に)

*1:というか、小説は趣味の領域へ戻りつつあります。書き残しているテーマの多くは、商業を意識した小説では書くことが許されない思考や感情なので。

*2:忘れている仕事もあるはずなので、思い出したら、ときどき修正します。

*3:本当にいつも同じことしか書いてないですが、特に変わったこともないので、しょうがないのです。

*4:この本は昨年、原田さんからお借りしたので、執筆時点ではうろ覚えでしたが。

*5:暇なので、本棚からいくつかセレクトしようかと思ったら、凡庸すぎて諦めたほどの平凡な読書傾向でした。

2017年、あけましておめでとうございます

もう2月ですが、2017年の初ブログなので「あけましておめでとうございます」です。
本年もよろしくお願いいたします。

SFが読みたい! 2017年版

SFが読みたい! 2017年版

 

とりあえず、今年も早川書房さんの『SFが読みたい!2017年版』ベストSFアンケートに回答しております。

それ以外はあいかわらず開店休業というか、だいたい寝たり起きたりぼんやりしているだけの隠居生活でして、学生時代からの友人たちと新年会で飲んだ以外、1月は何もイベントがなかったです。
大丈夫なのかそれで。まァ、大丈夫ではないですが。

他人とコミュニケーションすらしていないというのは、もはや小説を書く以前の問題ではないのか、という気もします。

 

せめて物語脳のリハビリくらいはしようと、公開時に観そびれていた映画を立て続けに観ておるです。
なにせ、昨年観た新作は傷物語』『シン・ゴジラ』『ハイ・ライズ』『ゴーストバスターズ』『この世界の片隅にくらいで、あとはプリンス追悼の『サイン・オブ・ザ・タイムズ』爆音上映や名画座の旧作ばかりというテイタラクだったので。

映画にしても漫画にしても小説にしても、好きな作品なんだけども、ほんの少しひっかかるところがあって、それを妄想で膨らませていくうちに、自分の物語になってしまった、というパターンで物語創作業をしていたので、結局、観ることでしか物語脳のリハビリと回復はできないわけです。

なので、まったく観る意欲が湧かないとか、「面白かったなァ」だけで終わってしまうと、あー、物語脳が麻痺しているなー、と思います。
ただ、前者は本当にまずいけど、いちユーザーとしては後者の状態が健全なのですよね。
もやっとした引っかかりを妄想で補完していくというのは、健全とは言い切れないような気もするのですよ。

そう考えると、創作という行為は、健康と不健康の微妙な境界にあるのだなァ、と思います。

 

だいたいそんな調子なので、小説を書くかもしれません*1し、別の仕事をしているかもしれません。

別に霞を喰って生きているわけではないので、何かしら仕事をしないといかんわけですが、他人との接点がそもそもないので、今のところはただまったりと日々が過ぎていくだけなのです。

*1:『空想東京百景』の続編以外は暇つぶしなので、特に発表することもないですが。

『十八時の音楽浴 漆黒のアネット』電子書籍版配信開始

ガガガ文庫は有名タイトル以外、過去へ遡行していく形で電子書籍化していたので、長いこと本文イラスト入りの電子書籍版がなかった*1『十八時の音楽浴 漆黒のアネット』ですが、ようやく電子書籍化されますよ。

csbs.shogakukan.co.jp

偶然、発見したので、特に出版社から連絡はないのですが、18日から配信開始のようです。

ついでに、内容紹介と当時の思い出話を少々。

『十八時の音楽浴 漆黒のアネット』は、昭和で戦前の名作娯楽小説をトリビュートというか、ライトノベルとして脚色した跳訳」シリーズ第一弾ですが、世界観や登場人物が『空想東京百景〈V2〉殺し屋たちの休暇』『空想東京百景〈V3〉殺し屋たちの墓標』と地続きになっている、なんともアマルガムな小説です。
ある意味、『空想東京百景』シリーズの外伝と言えるかも知れません。

空想東京百景<V2>殺し屋たちの休暇 (講談社BOX)空想東京百景<V3>殺し屋たちの墓標 (講談社BOX)

2007年にレーベル創刊第二弾で刊行された小説でしたので、もう9年経っているんですが、なんでそんなおかしなコンセプトのシリーズを当時のガガガ文庫が出したのかというと、元々、レーベル創刊を企画したのはIKKI江上英樹編集長*2で、ファウストみたいなものを作りたかったらしいのですね。*3

なので、副編集長も当時のIKKI副編集長が出向されていて、佐藤大さんが出した跳訳」シリーズという斜め上なネタも創刊記念企画として通ってしまった*4ので、誰か書けるひとはいないか、ということで、それまで縁もゆかりもなかったぼくがいきなり呼ばれたわけです。

創刊前夜はデザイナーやイラストレーターも足りなかったので、デザイナーさんはぼくのほうから『空想東京百景』シリーズヨーヨーラランデーズさんにお願いいたしました。

そしてレトロフューチャーな作品なので、ロシア構成主義風というか、ムーンライダーズ『マニア・マニエラ』T.E.N.Tレーベル版の奥村靫正みたいな感じでお願いします」という無茶ぶり極まりないデザイン発注をやらかした*5のですが、いただいたデザインはさすがでした。

マニア・マニエラf:id:yuz4:20070527135225j:plain

イラストレーターの宮の坂まりさんも、期待通りの素晴らしいイラストでした。今は別名義で乙女向けな漫画家さんをやっておられます。

で、いきなりの無茶な企画ものの話に乗ったのは、レーベルの編集方針がファウスト』のライトノベルというコンセプトで、母体となったIKKI青年漫画誌でしたので、暴力描写や性描写も青年漫画誌基準で書いていいよ、ということが決め手でした。

2010年以降、文庫系で担当さんが付いているのが、青年漫画誌基準というかもっとマニアックなハヤカワ文庫JAだけですので、現在、そのあたりがどうなっているのかは知らないんですが、文庫系のライトノベルは基本的に少年漫画誌基準ですので、あんまり無茶なことはできなかったのです。
当たり前と言えば、当たり前のことなんですが、実際、それでいくつか文庫系のライトノベルレーベルでの企画が流れていたのですね。

とはいえ、担当さんが同じだった深見真さん*6は、もっとエロス&バイオレンスな『武林クロスロード』『ロマンス、バイオレンス&ストロベリー・リパブリック』というドえらいものを書いていたので、ぼくはまだまだ甘いなァ、と思っておりました。 

 

ところが、創刊から一年ちょっと経ったあたりで社内でいろいろあったのか、レーベルの管轄がIKKIから週刊少年サンデーに移りまして、少年漫画誌基準になりました。
結果、
ぼくはさておき、深見さんも書かなくなったので、やっぱり人類には早すぎる小説だったのかなァ、と。*7
単にその前後で担当さんが辞めたからってのもありますけど。

ちなみに、ぼくは小学館の漫画だと、今は亡きヤングサンデーに連載されていた『殺し屋1』が大好きなんですが、年末のパーティーの二次会で、酔っ払っていた部長さんにそのあたりの話をしていたら、「君の小説、面白いけど、小難しいんだよ」「もっとぼくが手がけた『名探偵コナン』みたいな小説を書きなさい」「(逆ギレしながら)ゆうきまさみくんは天才なんだよ!」という説教をいただきまして一触即発になりかけたのも、いまとなっては実に良い思い出です。

何はともあれ……というか、自分で言うのも何ですが、編集方針が変わる前の黒歴史っぽい案件だった『漆黒のアネット』までKindle化されたということは、 ガガガ文庫の既刊は創刊時まで遡って、すべて完全版の電子書籍で入手できるようになったのかな?

だとしたら、それはめでたいことです。
小説を書かなくなっても書店で見なくなっても、入手できるというのは、作家にとっては有り難いことですから。

ぼくの小説に関しては、『空想東京百景』シリーズ『咎人の星』が既に電子書籍化されておりますので、あと『雲形の三角定規』電子書籍化されますと、初期の習作を除くゆずはらとしゆき全作品が電子書籍化されるのですが、いつになるのかなァ。

*1:宮の坂まりさんのイラストが入っていない廉価版(?)はあったんですが。

*2:元『ビッグコミックスピリッツ』の名物編集にして、元『IKKI』名物編集長。『ピンポン THE ANIMATION』で世界の果てまで自分探しに行っていたあの江上さんです。

*3:当時、「いきなり江上さんが話を聞きに来たんだよ」と、『ファウスト』の太田(克史)さんが言っておりました。

*4:この時点でかなり正気の沙汰ではない。

*5:もっとも、『空想東京百景』シリーズのときも、似たり寄ったりの無茶ぶり発注ばかりしているので、本当に申し訳ありません。

*6:担当さんは同じでしたが、直接の面識はないです。

*7:副編集長も『IKKI』に戻られて、いまは『ヒバナ』編集長になっています。